緑豊かな一橋大学構内に建つ空手道場。隣接する住宅街に練習時の声が響かない設計と、環境負荷の少ないシステムが求められました。
騒音に対する課題をクリアするためには、大きな開口を開けることができません。夏季でも大きく窓を開け放つことなく、同時にエアコンには頼らずに、快適な室内環境をつくりだすために導き出した答えが、北面のハイサイドライトと南面のガラリです。切妻屋根を分割し、少しずつずらしながら北側妻面に4つの窓を設けました。北面のハイサイドライトであれば一日中やわらかな光を取り入れつつ、熱取得は最小限に抑えられます。
一方、エントランス上部にある南側妻面に設けたガラリからは風を取り込み、床下へ流し込んだ後、道場の床面から吹き出させています。床下から吹き出された空気は、道場内の熱気と共に、そのほかの南側妻面ガラリから排気され、室内は風通しの良い木陰のような環境に近づきます。
建築に求められる機能や建築が置かれる環境は、矛盾する条件をはらむことが往々にしてあります。何かを切り捨てたり犠牲にしたりして矛盾を解消するのではなく、矛盾の中から最適な解を見出すように建築をつくりました。